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Shigemi Takajo AudioSystem |
「ガラクタ部屋」のオーディオシステム 考案者は Shigemi Takajo |
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「ガラクタ部屋」のオーディオシステム
ピアノ演奏や歌を録音すると、その場でナマさながらの音をリアルに再現できるという20畳ほどの部屋がありました。ナマの音なのか録音された再生音なのか区別がつかないほどの不思議な空間です。この部屋で再生されるパイプオルガンの重低音はあたかも教会にいるのかと錯覚するほどリアルに再現されるのです。さらに、お祭りの賑わいやお神輿をかつぐ大きなかけ声が目の前に突然現れたかと思うと、雷の落ちる音、台風のものすごい風の音、恐怖に叫ぶ声がナマさながらに再現されるーー来日したドイツの国立音楽大学の教授はこの部屋のことを「魔法の部屋!」と叫びました。その不思議な空間が一般の住宅の中にありました。
この部屋で再現される圧倒的な重低音とリアルな再生音は巨大な低音用ホーンを含むオールホーンシステムによって再現されます。この低音ホーンは左右の天井に設けられた鉄筋コンクリート製ラッパ型のホーンです。開口は1.8m×1.2m、高さは2.0mで二階の床を突き抜けて造られた巨大なホーンになります。再現できるのは迫力ある重低音だけではありません。朝顔ラッパ型の中音ホーン、中高音ホーン、高音ホーンによって、ピアノやヴァイオリンなどの楽器演奏や歌声、お祭りの賑わい、雷や台風、静粛な中で鳴く秋の虫の音など、ありとあらゆる音をリアルに再現できる魔法の部屋なのです。
このシステムを考案したのは、オーディオの権威でもありアマチュアとしての音楽評論家でもある父・髙城重躬(たかじょうしげみ)です。この部屋にあるものは何から何まで自分で考案したもので、タカジョウ・システムといわれています。LP初期となる当初のシステムは、すべてが自作といえるオリジナルなものでした。原音再現を追求した真のハイファイマニアだといえます。オーディオに興味のある方であれば、原音が再現できるこの部屋のことや名前をご存知かもしれません。 父は骨董収集の趣味もあったので、室内は古物店で買った太鼓や鈴などの鳴り物やランプ、壺などが雑然と置かれていました。本人は「リスニングルーム」ということばは性に合わないといって使うことはありませんでした。そのため、この部屋のことを紹介する際は本人が称していた「ガラクタ部屋」にしたいと思います。
はじめに
父・髙城重躬は26年前に亡くなり、残念ながら原音が再現できる「ガラクタ部屋」は存在しません。このようなシステムは他にもあるかもしれませんが、何から何まで自分で考案、録音再生できるシステムを自作してしまうような例はほかにはないかもしれません。
亡くなる直前、病院への送り迎えの車中のことでした。「自分が死んだ後、あの部屋のものはすべて残さず処分して欲しい。」と自らの思いを伝えはじめたのです。その時は聞き返すほど戸惑ったことを覚えています。「ガラクタ部屋」の物は父が大事にしていた物や大変お世話になった方々の関連する貴重なものばかり。自分が処分するには荷が重いと考えてしまったのです。それまではこのまま保存できれば一番よいと私は常々思っていました。
しかし、よく考えてみれば「ガラクタ部屋」の物はすべて本人の趣味で長い時間をかけて創り上げてきた「聖域」でした。ここで再生される音は自分でしか調整することはできない、といって自作の装置を他人に触れさせることはありませんでした。主のいないところで他人に見せたり触れさせたりされては困る、満足できない音を聴いてもらっても困る、そのようなメッセージとして受け止めていました。
私は父の遺志を尊重し、ガラクタ部屋のすべてを処分することにしました。父が亡くなって26年、いまになってやっと過去のことを振り返ることができるようになりました。
今のオーディオ機器は大変な進歩を遂げています。「ガラクタ部屋」は現在では通用しない過去のものかもしれませんが、髙城重躬の思いや考え方はオーディオファンや若い皆さんに参考になるのではないかと考えるようになりました。私の知っている父・髙城重躬を皆さんに紹介しようと思います。私は建築設計の道を選んでしまいましたので、オーディオや音楽についての知識が不足しています。間違いや勘違いも多々あると思いますが、ご指摘ご教示をお願いできればと思います。ネットによる情報は今まで見ることはありませんでしたが、間違った情報も記載されているようです。名前についてはお伝えしておきたいと思います。「髙城」は正式には「高」ではなく「髙」になります。父の原稿にあるサインもこの「髙」になっていましたが、異体字であるとしてあえて修正を求めてきませんでした。今後は正式な姓名にしていきたいと思います。
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