富士ハウス破産から学ぶこと
<倒産被害者とならないための注意事項>

 

富士ハウスは関東、近畿地方などで木造注文住宅を手掛ける住宅メーカーで、平成21年1月29日、自己破産しました。負債総額は関連会社を含め約640億円。元施主に建築代金の7割から全額を着工前に支払わせてしまったため、倒産によって1000万円以上を支払ったのに家が完成しないケースが多く発生し社会問題となりました。
 
元社長の経営責任が争われた裁判で、東京高等裁判所は平成25年4月に元社長の賠償額を一審判決の5分の1以下に減額する判決が下され、和解に至っていません。建設会社が破産した場合に建て主を保護する法律は整備されていません。建設会社の破産が建て主に与える影響の大きさが浮き彫りになったと言えるでしょう。


富士ハウス残した教訓<読売新聞特集記事>
 
読売新聞平成21年12月25日付朝刊の静岡版で特集された「富士ハウス残した教訓」に有限会社城建築設計スタジオ城芳昭氏他2氏の専門家によるコメントが掲載されました。

消費者は何に気をつければよいのでしょう

消費者は自己防衛が必要
(高城芳昭一級建築士)
「注文住宅の購入には大きなリスクがある。消費者は自己防衛が必要だ。工事代金の支払いは出来高払いが基本。多額の前払い金には応じてはいけない。 ( 中略 ) 業者も慎重に選ばなければならない。1社に絞らず数社から意見を聞き、手掛けた例を見せてもらう。実際の購入者を紹介してもらい、意見を聞くのも良い。請負契約書に添付される『請負契約約款』に書いてあるトラブル時の解決方法や支払い方法、契約解除の場合の措置などを必ず確認し、説明を求める。いかに丁寧に説明してもらえるかが良い業者選びのポイントだ。」住宅の購入には大きなリスクがあり、購入には法律で保護されていないことが多くあります。購入するには購入者自ら自己防衛しなければなりません。

注文主保護の法律ない
(「欠陥住宅全国ネット」河合敏男弁護士)
「建設業法は『住宅の工事費用を前払いする場合、注文主は業者に対し、倒産に備えて保証人や代わりの業者を立てるよう求めることができる』と定めているのに、一般には知られていない。 ( 中略 ) 業者が倒産した場合に注文主を保護する法律も整備されていない。工事代金を前払いする危険性を周知する消費者教育を推進することに加え、業者に住宅完成保証制度加入を義務づけるなど、注文主を保護するための法律を整備することが必要だ。」

情報や交渉力で格差
(「NPO法人京都消費者契約ネットワーク」長野浩三弁護士)
「消費者が業者に代金を前払いしたが、サービスや物を受けとる前に業者が倒産し、サービスも代金の返金も受けられなくなった事例にあたる。  ( 中略 ) 業者と消費者の間に、情報や交渉力の面で格差があることを示している。代金を前払いする場合は、経営状況に関する情報を業者に事前に開示させるなど、消費者が被害に遭うのを防ぐための制度を整備する必要がある。」
以上、読売新聞静岡版で特集された「富士ハウス残した教訓」より。


倒産被害者とならないための注意事項
<週刊ダイヤモンド誌特集記事>


週刊ダイヤモンド誌平成21年6月6日特大号に城芳昭一級建築士の取材を元に掲載されました。

事業者の破産で想定される被害
建設会社や住宅販売会社など住宅を供給する企業は、新築住宅を引渡してから10年間は住宅の主要構造部の欠陥や雨漏りについて補修する義務が法律で定められています。

しかし、建設会社や住宅販売会社である契約先が破産してしまった場合、欠陥の補修や約束されていた保証、アフターサービス等を求めていく先はないということになり、下請業者等を知っていたとしても、直接の契約関係がないため無償での修理を求めることができず社会問題となりました。

2009年10月から住宅瑕疵担保履行法の施行により、引渡し後の主要構造部の欠陥や雨漏りについて、住宅かし保険や保証金の供託義務により消費者保護が行われるようになりました。ただし、この保証は引き渡し後が対象となるため、工事途中で建設会社が倒産した場合の保証は含まれません。
(途中省略)

被害を回避するための対策
建築途中での建設会社倒産の被害を極力少なくする対策は、なるべく工事の出来高に応じた支払い方法とすることです。請負契約で支払い回数を工事の出来高に応じ、例えば契約時1、着工時3、上棟時3、完成時3といった割合で支払う方法です。
(途中省略)

請負契約での注意点
請負契約書には請負契約約款、見積書や設計図書、工程表などが添付されます。請負契約約款は、当事者間でトラブルが生じた場合の解決方法などが書かれている大切なもので、契約者は必ず内容を確認しなければならないものです。

 一般的に広く利用されている「民間連合協定工事請負約款」があるので、比較してみるのもよいでしょう。引渡しの時期と出来高に応じた支払い方法、契約解除する場合の措置などは念入りなチェックが必要です。
(途中省略)
以上、週刊ダイヤモンド誌特集記事「倒産被害者とならないための注意事項」より。


大規模修繕工事の注意点

マンション大規模修繕工事の工事内容や工事金額、建設会社を決定していくことは、管理組合にとって大きな負担となります。決定に至る過程は透明性を持って明らかにする必要があります。そこで、管理組合をサポートする方法として、設計コンサルタントへ依頼する方法が有効とされてきました。
  
しかし、設計者が談合に関与して、建設会社からバックマージンを要求し、高額な工事費となってしまうケースなど、管理組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントの存在が指摘されています。


設計者の談合関与を防ぐ方法
設計者は管理組合をサポートする立場なので、管理会社や建設会社と一線を画し、管理組合サイドに立ってサポートできる信頼できる設計者が理想です。
 
設計者の選択は、管理会社やマネージャーなどに全てを任すことは住民の理解を得ることができません。また、設計者から提案される内容については、設計者が決めるのではなく、管理組合主導で決定しなければなりません。


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